土曜日, 5月 24, 2025
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写真集『自由な時間』PR イベント 心で繋がる写真集『自由な時間』はどうして生まれたのか? -カウンセラー写真家・立山紘が語る自由論 -

2 月 11 日、写真集『自由な時間』(三省堂書店/創英社) PR イベントとして、フォトグラファー立山紘氏(著者)と編集担当者による「私が思う『自由』とは?」をテーマとする著者インタビューが行われた

自由な時間

[タイトル]   『自由な時間 Amazing Japan Photo』(電子版)

[公開日]   2024年4月19日 

[定価]     税込1650円(本体1500円+税10%)

[発行・発売] 三省堂書店/創英社

[主な構成]  「序」/大地のUniverse/Wonder Zone/都会のGalaxy/あとがき

― インタビュー(ダイジェスト版) -

(編集)今回、書籍のタイトルともなっている「自由」について、まずはお考えを披露いただきたいと思います。
(立山)社会的側面、歴史的側面、自由の概念はアプローチも多々ありますけど、根源として行き着くものはやはり個々の内面的な自由、そこをどう捉えるかというところになってくるかと思います。 

どんなに時代が変わろうとも、私たちを前に進ませるものは心であり、後退させるのも心ということになるでしょう。良くも悪くも、私たちの行動の相当程度は目に見えない無意識的な要素によって左右されているのではないでしょうか。
 広く用いられる「リバティー」と「フリーダム」の対比、それを個人的な自由に当てはめるとするなら、個々の中に深く根差している自己の制約、機制の鎖、そこからの解放がリバティーであり、その山を一つひとつ越えて見えてくる景色がフリーダムといったイメージでしょうか。そんな一連のアプローチ、その先にある境地を写真と文章で体現してみようとの想いが、『自由な時間』という写真集の制作動機となりました。

(編集)「制約」「機制」の言葉に立山さんのもう一つの顔であるカウンセラーの片鱗を感じますが、人はこれらによってそんなに束縛されているものなのでしょうか。
(立山)人の心の中には、百人いれば百通りの内的制約や機制の組み合わせがあると言って過言ではありません。奇しくも各人の人生の対処法と軌を一にしており、二面性を有していると考えます。それらはその人の助けとしても、呪縛としても機能するからです。世相が目まぐるしく変転する状況にあって、価値観の多様化、自己の喪失、視野の狭窄等、現代的呪縛に呻吟する多くの事例を目の当たりにするにつれ、心理カウンセラーの端くれとして修養を重ねても来ましたし、言わば「時代の要請」を感じ取り、「自らの責任」を感じ取り、編まれたのが『自由な時間』なんです。

(編集)「束縛」がいよいよ「呪縛」という禍々しい表現に代わり、立山さんの中で事態は深刻に映っているようですが……。
(立山)「制約」「機制」が人それぞれである背景には、その育成環境が十人十色であるということがあります。子は親の背中を見て育ち、親の醸成する精神風土の中で育つ内に、親の意向に沿った感情傾向を持つようになります。好きなおもちゃを買ってもらえない時、ひたすら我慢するのか、喚き散らして買わせる方向に持っていくのか、はたまた不貞腐れという沈黙作戦を貫くのか。

親の日頃の気質、リアクションを見ながら、子供は様々な方策の中から「こうすればこの場を丸く収められる」といった行動基準を体得し、強化していく。いつしかそれらは、その子にとって大切な「生存戦略」として温存されるような傾向にあるので、大人になってもそれらが処世のための「伝家の宝刀」に仕立て上げられてしまうことがあります。
 幼少から親の意向に沿うプライベートな「生存戦略」を駆使してきた子供がやがて成人し、家庭から社会へと舞台が移った時になにが起きるか。「泣き落とし」「駄々っ子」「作り笑い」のハウスルールが全く以って効用を持たないばかりか、予期せぬことに、自身にとっての桎梏となっていることに薄々と気づいていきます。気づいちゃいるけど、そう簡単には止められない。挙句、余人からはパーソナリティーの偏りなどの汚名を得たりもする。これは「呪縛」の言葉を以ってしても、言い足りないかもしれません。

(編集)この、眼前に立ちはだかる「呪縛」に対し、フォトグラファーとしては如何に挑まれたのでしょうか。
(立山)写真家になったきっかけが厳冬の雪国の風景、その神秘性に魅入られた所から始まりましたので、風雪の最もシビアな側面、己の我欲が全く通用しない過酷なシチュエーションを起点として撮影を組み立てていく、その体験は自身にとって非常に大きな内的洞察の契機にもなりました。
 掛け値なしの自然、その中でシミュレーションやイメージが合致するのは、コンマ数パーセントといった所でしょうか。実際問題、掲載写真の裏には数百倍のミスショットの山が築かれます。これは「自由」の対極にある、意のままにならぬシビアさの標榜とも受け取られがちですが、「コンマ数パーセントの合致」という一縷の望みにも小さくない意味があると感じています。この「合致」は、「この厳しい気象条件の中で自分が出来ることは何か」の内省により開幕されるものだからです。自然の中での自己内対話は、自身の先入観、社会的ペルソナ、見栄などから必然的に隔絶されたものとならざるを得ず、極めて「ニュートラル」な方向に向かうと思うのです。やがて目の前の景色が、より自然的なものに見えてくる。それは「何物にもとらわれていない状態」への畏敬を喚起する。まさに「分からないことは風に訊け」を地で行くことになります。この繰り返しが「シンプルな自分」を研ぎ澄ます営為へと昇華していく時、そこには制約に囲まれつつも不思議と自由な状態というパラドキシカルな境地が拡がるんです。
 人間のサガである無意識的な呪縛との対峙、撮影取材を通じて私自身がそこを体験し続けてきた系譜があったらからこそ、自由の根源という探究テーマを作品制作の軸に据えるという機会に出会えたのかもしれません。

(編集)自然との対話、延いては自分との対話がカタルシスを召喚するという素晴らしい効能を持っていることを教えられた気がしますが、サイコロジストとしては本書に如何なる願いを込められたのでしょうか。都会の風景を敢えて雪国の情景と一冊にまとめた意図というのも心理的な要素からなのでしょうか?
(立山)雪国の取材を突き詰めながら『ふゆぼん』『ふゆのね』とフォトエッセイを2冊作った辺りで、自分の中に在りながらも見えていなかった自己というものが朧気に見えてきました。そのタイミングで自身の生まれた地である東京という街と今一度向き合ってみようと想い立ち、雑踏を歩き続け、『想東京』という都会のフォトエッセイを出版したわけですが、そうこうしている内に時代の転換期ともいうべきコロナ禍の閉塞状況が始まり、社会全体の価値観が大きなうねりと共に変転していくパラダイムチェンジが起きました。
 人間はあまりに急速な変化を前にした時、心の平静を保つべく慣れ親しんだ行動様式に固執したり、心理を退行させて恒常性を保とうとします。その時に現れるものは、まさに先に話したような幼少期に培った生存戦略であり、それらと現実に起きている問題とのギャップが拡がれば拡がるほど葛藤もまた拡がってしまう。最近よく耳にする分断という言葉、その根底は私たちそれぞれの心の中の分断状態であると悟った時、「都会の写像」と「雪原の荒涼」を一冊に共存させた写真集というイメージが、心の中に浮かんだんです。

(編集)写真家としてのストーリーの狭間に、今という時代が抱える社会課題が浮き上がってくる気がします。今作『自由な時間』を通して何を一番読者に伝えたいのか、最後にお聞かせいただけますか。
(立山)「伝家の宝刀」「生存戦略」と少々ハードな表現が続いてしまいましたが、 私たちが内的な「宿命」と折り合いを付ける処方は、やはり「自身の内面の奥行きを拡げることである」と思うんです。それは同時に「他を認める器量も広がる」ことにも繋がる。多様性を認めすぎると自分喪失的な憂き目にも遭いますが、その予防のためには、今の自分にとって譲れないもの、しっかりと視座に据えるものを中心に置くことが重要だと感じます。箱庭に例えるならばドッシリとした幹の周りにバリエーション豊かな脇役を置くような感じと言えばイメージしやすいでしょうか。
疲れた時のシェルター然り、一歩前に進むためのスパイス然り、社会的な自己と脇役陣とが柔らかなコントラストを奏でられれば、それだけでも、じゅうぶん「自由」は生まれます。
幸いなことに、視点のコントラストを比較的容易に実現してくれるものが写真撮影という行為であり、その写像、写真(集)という産物なんです。
 「酸いも甘いも、粋も根も、共に在る、共に居る」その世界観こそが本作を通じて最も伝えたい根幹です。そこについては本著のあとがきにも詩的なメッセージとして綴っていますので、写真を堪能された後の箸休めとして、ゆったり読んでみて下さい。

(編集)「サイコロジスト」「フォトグラファー」「写真集」、まさに三位一体の力動ですね。
(立山)いつの間にか、Tさんが言いだしたトライアングルにすっかり包囲されてしまいましたが、コントラストの森を絶えず往還しながら、「作品深化」を目指していこうと思います。

 『自由な時間 Amazing Japan_Photo』

先の見えない時代の混沌、そんな今だからこそ自由成分を高濃度に配合したサプリメントのような写真集を作りたい。そんな想いで編み出された、カウンセラー写真家/立山紘による、珠玉の絶景セレクション。「最果ても都会も心で繋がる」をテーマに、自然が奏でる夢幻かつ無限のバリエーションを一冊にまとめた、まさに風景のオールスター。心理カウンセラーでもある著者が紡ぐ、心の自由を拡げていくヒントとなる短エッセイと共に、本書の癒しの効果は折り紙付きです。

【著者紹介】

立山 紘 Kou Tateyama

文筆家兼フォトグラファー、東京都出身。都会の雑踏から雪深き最果ての秘境まで、心に響く深遠の絶景を求めて撮影を続ける浪漫派フォトグラファー。文筆家としても、エッセイ・童話から短編小説まで幅広いジャンルを執筆。また、心理カウンセラーの資格を有し、写真の情動性と心理学の要素を融合させた新しい形のセルフケアを探究している。

《作品リスト》
冬のオムニバス作品集『ふゆぼん』(2015)
ドキュメンタリーフォトエッセイ『ふゆのね』(2017)
心象フォトエッセイ『「想」東京~ TOKYO emotion』(2019初版、2021第2刷)
風景のオールスター『自由な時間~Amazing Japan_Photo』(2022初版、第2刷)
Amazon Kindle  ワンコイン電子写真集『フォトの葉シリーズ~孤高・空艶・水域夢幻』(2022)
Amazon Kindle  3ヶ国語版 東京深遠紀行『TOKYO emotion』(2024)
Amazon Kindle  ワンコイン写真集『フォトの葉シリーズ~のんびりオアシス・Lucky!・Magical』(2024)
Amazon Kindle  僻遠の鼓動『雪氷荒野~The profound Japanese winter 』(2024)

《公式ホームページ》

・心のフォトサロン https://www.tateyama-kou.net/

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