アメリカ各地で広がる“自転車旅”の新潮流~サイクリスト用の専門施設も拡充

アメリカ合衆国では、2026年に建国250周年という歴史的な節目を迎えるにあたり、全米各地で“自転車旅”への注目が高まっています。次世代型の観光体験として注目されるサイクリングツーリズムは、都市部の自転車専用道を走るアーバンサイクリングや、傾斜のある山道を一気に下るダウンヒルライドなど、多彩なスタイルで楽しめるのが特徴です。こうした自転車を使った観光体験の多様化を背景に、全米各地でユニークなサイクリングイベントが開催されたり、大規模なインフラ整備が積極的に進められています。アメリカの公式観光促進団体であるブランドUSAでは、旅行者向け公式ポータルサイト「AmericaTheBeautiful.com」を通じて、今夏から2026年にかけて開催予定の注目イベントや、新たに開業したサイクリスト専用施設を厳選し、その情報を公開しました。
歴史的周年に向け、全米各地で大型サイクリングイベントが開催へ
2026年7月4日に迎えるアメリカ建国250周年に向けて、フィラデルフィアやワシントンD.C.をはじめとする全米各地で、記念式典やパレード、音楽フェスティバルなど、多彩な祝賀イベントの開催が予定されています。また同年、アメリカは史上2回目となるサッカー・ワールドカップの開催国となり、ニューヨーク・ニュージャージー、ロサンゼルス、マイアミをはじめとする全米11都市にて、国際試合の開催が予定されています。また、アメリカ初期の国道「ルート66」が制定から100周年を迎えることから、シカゴからサンタモニカまでを自転車で巡る旅にも注目が集まっています。こうした動きの中、全米を横断する全長約4,800キロのルートを舞台とした世界有数の過酷な自転車耐久レース「RAAM(レース・アクロス・アメリカ)」が、先月10日より約12日間にわたり開催され、世界各国から集まったサイクリストが熱戦を繰り広げました。
今夏以降、全米各地では大規模なサイクリングイベントが相次いで予定されています。今月27日には、ペンシルベニア州ピッツバーグのストリップ地区およびローレンスビル地区にて、地域密着型のサイクリングイベント「オープン・ストリーツ・ピッツバーグ」が開催されます。通常は車両が行き交う幹線道路を一時的に閉鎖し、歩行者やサイクリストに開放する本イベントでは、地域全体を舞台に、無料のフィットネスプログラムや子ども向けの自転車教室、地元の人気飲食店による屋台の出店など、さまざまなアクティビティが展開される予定です。
本年9月20日には、テキサス州コーパスクリスティにて、チャリティサイクリングイベント「コンカー・ザ・コースト」が開催されます。約106キロ、約55キロ、約16キロの3コースが用意されており、美しい海岸沿いの風景を楽しみながら、初心者から上級者まで幅広い参加者がそれぞれのペースで走行できる構成となっています。
本年10月12日には、ニューヨーク州ポキプシーを拠点に、地域の魅力を体感できるサイクリングイベント「ディスカバー・ハドソンバレー・ライド」が開催されます。約24キロから160キロまで、紅葉に彩られたハドソンバレーの自然美を満喫できる5つのコースが用意されており、本年も多くの参加者の参加が予定されています。
全米の主要都市で自転車専用レーンが続々誕生
全米各地の都市では、地域住民と旅行者の双方が安全かつ快適に利用できるよう、自転車専用レーンの整備が進められています。シカゴでは、トレンディなリバーノース地区に新設された「クラーク・ストリート・プロテクテッド・バイクレーン」が注目を集めており、交差点には自転車専用信号が設置されているほか、歩行者に配慮した縁石の張り出しや退避スペースなどの安全対策も講じられています。現在、同市では今後5年間で約240キロに及ぶ自転車道の整備が計画されており、整備が進むことで、サイクリングの途中にショッピングエリアやカジュアルから高級まで幅広いレストラン、さらにリンカーンパーク動物園など、魅力的な観光施設へのアクセスもよりスムーズになる予定です。
カリフォルニア州サンディエゴでは、サイクリストから注目を集める新設ルート「パーシング・バイクウェイ」が、昨年夏に開通しました。クラフトビールやナイトライフで人気のノースパーク地区と、サンディエゴ動物園や歴史的な文化施設が点在する約490万平方メートルの広大なバルボアパークを経由し、ダウンタウン方面へとつながる本ルートでは、新たに架けられた橋をはじめ、サイクリストの安全に配慮したインフラ整備や景観照明などが導入されています。
さらにカリフォルニア州北部では、ナパバレーを南北に貫く「ナパバレー・ヴァイン・トレイル」において、昨年夏に全長約14キロにおよぶ新たな区間が開通しました。この整備により、サイクリストはカリストガとセントヘレナを結ぶブドウ畑の丘陵地帯を、ワインの香りが漂う中、心地よく走行できるようになりました。
コネチカット州では昨年夏、アメリカ東海岸を縦断する大規模なサイクリングルート「イースト・コースト・グリーンウェイ」の一部であるムースアップ・バレー州立公園トレイルに、新たに約10キロの区間が整備されました。本ルートは、ムースアップの町からロードアイランド州方面へと延びており、約25万平方メートルにおよぶ湿地帯や川、池、森林など、豊かな自然に囲まれた環境の中を走行することができます。「イースト・コースト・グリーンウェイ」は、メイン州からフロリダ州まで全長約4,800キロにわたり、15の州と450の都市や町を結ぶ、東海岸屈指の広域サイクリングルートとして整備が進められています。
人気が高まる雄大な山岳地帯でのアドベンチャーサイクリングの魅力
起伏に富んだ地形を駆け抜けるマウンテンバイクは、冒険心を刺激するアウトドアアクティビティの一つとして親しまれています。アメリカ各地では、初心者から上級者まで幅広く楽しめる多彩なマウンテンバイクトレイルが整備されており、アパラチア山脈を擁するブルーリッジ山地のほか、アーカンソー州ベントンビル、ジョージア州エリジェイ周辺、バージニア州、コロラド州、ユタ州、アイダホ州、アリゾナ州、オレゴン州などが、マウンテンバイクの聖地として知られています。
中でも「マウンテンバイクの世界的首都」と称されるアーカンソー州ベントンビルでは、全長約210キロにわたって一人乗り幅のトレイルが整備されており、各サイクリストが自身のスキルに応じたコースを選んで走行できます。街全体が自転車に配慮した設計となっており、地域の温かく開かれた雰囲気が、世界中のサイクリストを惹きつけています。本年5月には恒例の「ベントンビル・バイク・フェスティバル」が開催され、電動アシスト自転車の試乗会やプロライダーによるデモンストレーション走行、子ども向けワークショップなど、充実したプログラムが展開され、盛況のうちに幕を閉じました。
ユタ州モアブでは、赤褐色の渓谷地帯を縫うように広がるトレイルを走行するサイクリングを楽しむことができます。さらに、本格派サイクリスト向けの人気イベント「モアブ・ロックス」が2026年5月2日から4日にかけて開催予定で、ポーキュパイン・リムやマグ・セブンなどの伝説的なトレイルを巡る、複数のコースを日替わりで走る競技形式のイベントとして、国内外のマウンテンバイク愛好者から大きな注目を集めています。
アウトドア人気とともに注目集まる、キャンプ&サイクリング体験
アメリカでは、夏のアウトドアアクティビティとして、サイクリングとキャンプを組み合わせた過ごし方が人気を集めています。全米各地のキャンプ場では、サイクリスト向けのトレイルが整備されているほか、充実した設備も備わっており、大自然の中でゆったりとした時間を楽しむことができます。たとえば、オレゴン州にあるバンクス・バーノニア・ステート・トレイルは、全長約34キロにわたる人気のハイキング&バイキングコースで、バンクスとバーノニアという2つの町を結んでいます。沿線には、テント泊やRV(キャンピングカー)で滞在できるキャンプ場も通年で営業しており、四季折々の自然に囲まれながらアウトドアを満喫できる環境が整っています。
また、同州ワシントン郡にあるL.L.スタブ・スチュワート州立公園では、キャンプやマウンテンバイクに加え、乗馬やハイキングなど多彩なアウトドア体験を楽しめます。森の中に点在するトレイルや施設が整備されており、家族連れから本格的なアウトドア愛好者まで、幅広い層に親しまれています。さらに今年からは、新ルールの導入により、公園内のほぼすべての自転車道で電動アシスト自転車(eバイク)の利用が可能となりました。これにより、従来は走行できなかった自然の中のトレイルでも電動アシスト自転車を使用できるようになり、初心者から上級者まで、自分のペースに合わせた快適なサイクリングを楽しめるようになっています。
宿を巡る新たな自転車旅「イン・トゥ・イン・バイキング」、全米各地で拡大中
サイクリストの間で近年注目を集めているのが、毎晩異なる宿に滞在しながら自転車で地域を巡る「イン・トゥ・イン・バイキング」と呼ばれる旅のスタイルです。欧米を中心に人気を集めており、土地ごとの文化や自然をより深く体感できる手段として、多くの人々に支持されています。このスタイルでは、ガイド付きまたはセルフガイドのツアーから選ぶことができ、自分のペースで気ままに走るだけでなく、志を同じくするサイクリストたちと小規模グループで旅を楽しむことも可能です。毎晩、その地域ならではのホテルや宿に滞在しながら、田舎道や風光明媚なルートをのんびりと走ることで、ストレスフリーなサイクリング旅を満喫できます。荷物は自分で持ち運ぶこともできますが、専用のサポートバンが同行し、大きな荷物を預けて身軽に走れるプランも人気を集めています。より快適に旅をしたい方にとっても魅力的なスタイルです。
ディスカバリー・バイク・ツアーズ、ポコノ・バイキング、ワイルダネス・ボヤジャーズなどの旅行会社では、数日間にわたる「イン・トゥ・イン・バイキングツアー」を提供しており、初心者から経験豊富なサイクリストまで、幅広いニーズに対応しています。
環境整備が急速に進む、誰もが楽しめるアダプティブ・サイクリングの世界
身体的な制限がある方でも安心して楽しめる「アダプティブ・サイクリング(適応型サイクリング)」の環境が、アメリカ各地で急速に整備されています。専用のバイクに対応したトレイルや、地域コミュニティによる支援プログラム、ミートアップ、さらにはロードレースやタイムトライアルなどの競技大会まで、多様なプログラムが用意されています。バーモント州ボルトンには、「ドライビング・レンジ」と呼ばれる全米屈指のアダプティブ・マウンテンバイク専用トレイルがあり、段階的に難易度が上がるコース設計に加え、橋やスロープなどの多彩な要素が組み込まれた本格的なコースとして注目を集めています。さらに、ユタ州パークシティの「ウッドワード・パークシティ」や、カリフォルニア州サンディエゴの「ブラックマウンテン・アウィー・トレイル」も、アダプティブ・サイクリストに人気のスポットとして広く知られています。
潮風を感じる、新しい旅のスタイル「ビーチ・クルージング」
全米に広がる美しい海岸線では、海辺の景観を楽しみながらサイクリングができる“ビーチ・クルージング”が人気を集めています。舗装された遊歩道に加え、一部の地域では砂浜そのものを自転車で走行することも可能で、幅広い層の旅行者に楽しまれています。砂浜での走行には、極太のタイヤを装着したファットバイクが適しており、各地のレンタルショップでは、一般的な自転車や電動アシスト自転車と並んで貸し出されています。
地元グルメと出会う、新たな地域体験「グルメ・サイクリングツアー」
全米各地では、自転車での移動と食体験を組み合わせた「グルメ・サイクリングツアー」が人気を集めています。地元の料理や文化に触れつつ、移動の合間やツアーの終盤には、その土地ならではのグルメやドリンクを楽しめるのが魅力です。
ニューメキシコ州サンタフェでは、郷土料理と文化を語りと試食で巡る「フレーバーズ・オブ・サンタフェ・バイクツアー」が実施されており、メキシコ系と先住民文化の融合を体感できます。また、街のシグネチャーカクテル「マルガリータ」に焦点を当てた「サンタフェ・マルガリータ・トレイル・バイクツアー」も好評で、サイクリングの合間や終了後に立ち寄れるよう配慮されたコース設定となっています。
イリノイ州シカゴでは、「ボビーのバイクハイク」によるツアーで、ディープディッシュピザをはじめとする地元の味覚を堪能できます。オレゴン州ポートランドでは、街中に点在する多国籍なフードトラック(屋台料理)を巡るサイクリングツアーが人気を集めています。地元で親しまれている「フードカート・オブ・ポートランド」と呼ばれるこのツアーでは、さまざまな国の味を楽しみながら市内を自転車で巡ることができます。さらに、フロリダ州南部のアメリア島では、地元の食文化や地域の歴史に触れながらサイクリングを楽しめる「フード&バイクツアー」が催行されています。
ワインやスピリッツをテーマとしたツアーも各地で展開されています。ニューヨーク州の「ハドソンバレー・ワイナリー&ディスティラリー・バイクツアー」では、田園地帯を巡った後にワイナリーや蒸留所でのテイスティングが楽しめます。このほか、オクラホマシティのクラフトビールを巡るツアーや、ケンタッキー州の「ケンタッキー・バーボン・トレイル」サイクリングルートなど、各地の特色が生かされたプランが揃っています。
これらのツアーは、バックローズ社やワイルダネス・ボヤジャーズ社などによって企画されており、ツアー中の飲酒タイミングにも配慮されているため、初心者から上級者まで安心して楽しむことができます。
廃線跡が生まれ変わる、全米で進化する「レイル・トレイル」
アメリカでは、かつて鉄道が走っていた廃線跡を再活用した「レイル・トレイル」が、サイクリングやハイキング、ウォーキングなど多目的に楽しめるトレイルとして人気を集めています。
中でも注目されているのが、ワシントンD.C.からワシントン州まで全長およそ5,950キロにおよぶ、「グレート・アメリカン・レイル・トレイル」です。アメリカ大陸を横断する歩行者やサイクリスト向けの、複数用途に対応した長距離トレイルとして整備が進められています。現在はそのうち半分以上にあたる約3,050キロがすでに開通しており、ハイカーやサイクリスト、歩行者に開放されています。ワシントンD.C.内では、米国議会議事堂を起点に、ジョージタウン地区のキャピタル・クレセント・トレイルへと続くルートが、現時点で100%整備された区間となっています。
このほかにも、アメリカ各地には個性豊かなレイル・トレイルが点在しています。たとえば、ペンシルベニア州ピッツバーグからメリーランド州カンバーランドまで約240キロを結ぶ「グレート・アレゲニー・パッセージ」、ウィスコンシン州にある全長約52キロの「エルロイ・スパルタ州立トレイル」、アイダホ州とモンタナ州の州境を走る約24キロの「ルート・オブ・ヒアワサ」、デラウェア州南部の「ジョージタウン=ルイス・トレイル」などが人気を集めています。
ガイド同行で安心・快適に、全米で広がる充実のバイクツアー体験
サイクリング旅行において「一人では不安」「快適に旅を楽しみたい」といったニーズに応えるのが、ツアー会社によるガイド付きの複数日程バイクツアーです。経験豊富なガイドの同行や参加者同士の交流、高品質な宿泊や食事がパッケージされており、初心者から上級者まで幅広い層に人気を集めています。また、ラグジュアリー志向や利便性を重視したサイクリングツアーも人気を集めています。たとえば、デュヴァイン・サイクリング・アドベンチャー社が提供する「カリフォルニア・コースト・バイクツアー」は、モントレー、ビッグサー、カーメル、サンタバーバラといった美しい沿岸都市を巡る4日間の贅沢なプランとなっています。高級ホテルでの宿泊、ワイナリー巡りやビーチでのサンセットディナーも組み込まれており、日中は1日あたり約40〜95キロを爽快に走り抜けます。
各地で拡大する「バイクシェアプログラム」、観光と地域回遊の新たな足として定着
バイクシェアプログラムは、アメリカ各地で広く導入されている、地域の日常や文化を気軽に体験できる移動手段です。街中に設置されたステーションで自転車を一時的にレンタルできる仕組みで、手頃な料金と高い利便性から、観光客はもちろん地元の人々にも支持されています。
代表的なサービスには、ニューヨーク市を中心に展開する「シティバイク」のほか、「ライム」「バード」「リフト」などがあり、いずれもアメリカ国内外のさまざまな都市で利用可能です。多くの公園では、専用アプリをダウンロードするだけで簡単に利用が可能です。無料で提供されているケースも多く、旅先でのアクティビティとしても手軽に楽しめます。ただし、2時間以内の利用制限や日中のみ利用可能など、条件が設けられていることもあるため、事前の確認がおすすめです。
アメリカでのサイクリング体験に関する詳細情報や旅行計画に役立つ最新情報は随時、公式ポータルサイト「AmericaTheBeautiful.com」にて公開予定です。
「アメリカには、スリリングなマウンテン・トレイルや美しい海岸線を走るルート、グルメを楽しむツアーや都市のサイクリングルートなど、実に多彩なサイクリング体験が揃っています。どの季節、どの地域を選ばれても、皆さまにはアメリカならではの豊かな文化や温かく迎える各地の街々、そして無限のレクリエーションの可能性を体感していただけることでしょう。皆さまのご訪問を心よりお待ちしております。」(ブランドUSA のプレジデント兼最高経営責任者(CEO)、フレッド・ディクソンのコメント)
ブランドUSAについて
アメリカ合衆国の公式観光促進団体であるブランドUSAは、アメリカを世界有数の旅行デスティネーションとして訴求し、国外から旅行者に対しアメリカの観光施策を伝達することをその目的として、旅行促進法に基づき、アメリカ初の半官半民の事業体として設立されました。ブランドUSAは、業界や政府機関との連携を通じて、データに基づいたキャンペーンや一貫したメッセージの発信を行い、アメリカの最新情報やビザ、入国関連の情報を含む旅行者向けのリソースを提供しています。ブランドUSAは、設立以来の12年間にわたり、旅行業界のパートナーと連携して実施してきたマーケティング施策により、訪米旅行者を1,030万人増加、約350億ドル(約5兆2,500億円 1ドル=150円換算レートにて計算)の消費を創出し、その経済効果は累計で760億ドル(約11兆4,000億円)に達し、年間平均で約4万件の雇用を支え、100億ドル(約1兆5,000億円)の税収を生み出しています。これらの取り組みはすべて、米国納税者の負担なしで実現されており、投資1ドルあたり20ドル(約3,000円)の経済的リターンを生み出しています。