水曜日, 4月 16, 2025
ホームイベント登山教育・スキー場・野生動物をテーマに“自然との共生”を探る。LNT Japanが初の研究助成で3名を選出

登山教育・スキー場・野生動物をテーマに“自然との共生”を探る。LNT Japanが初の研究助成で3名を選出

若手研究者を応援する。Leave No Trace Japan、初となる研究助成をスタート。環境保全・観光開発・青少年教育の3分野における〈2025LNT研究助成〉の採択者が決定

背景

2025年2月、Leave No Trace Japan(以下「LNT」という)は、環境保全、観光開発、青少年教育の3つの分野で活躍する若手研究者を支援するため、〈2025LNT研究助成〉を新設し、募集を開始しました。LNTリサーチチームによる厳正な審査の結果、3名が選出されました。助成期間は2025年4月1日から2026年3月31日までの1年間で、LNTは本助成を通じて、各分野における実践的かつ持続可能な取り組みを支える貴重なエビデンスが得られることを期待しています。

研究テーマ・採択者コメント

台湾の「山林開放」と登山者教育

松金ゆうこさん(筑波大学大学院理工情報生命学術院生命地球科学研究群山岳科学学位プログラム博士前期課程1年)

私は台湾の登山事情を研究しています。台湾の面積の7割が山地で、3000mを超える高山も多くあります。かつて山地は多くの人々にとって近寄り難い場所でしたが、現在は登山が余暇活動として普及しています。近年「山林開放」が進み、登山者数増加に伴う遭難や環境問題への対応のため学校や社会で積極的に登山者教育が行われ、リーブノートレイス運動も官民協働で推進されています。その状況を明らかにし、持続可能な登山のあり方を探ります。

  • LNTリサーチチームコメント
    本研究内容は、台湾でアジアで先行し導入されたLNT(Leave No Trace)の7原則と登山者教育との関係性に着目し、その実態を明らかにしようとする点が高く評価されました。研究の実施についても確かな計画が確認されており、その成果は、日本におけるLNTの普及や啓発に大きく貢献することが期待されています。


中小規模スキー場における存続メカニズムの検討―地域と住民に着目して―

黒澤俊平さん(筑波大学理工情報生命学術院生命地球科学研究群地球科学学位プログラム博士後期課程3年)

中小規模スキー場の持続可能性に注目し、観光地理学の視点から北海道やスイスを対象に調査を重ねてきました。大規模スキー場に比べて研究が少ない中、地域資源としての価値や住民の関わり方に着目してきました。本研究ではスイスのスキー場集落の人々がどのようにスキー活動を支え、変化に適応しているかその要因を探ります。また、都市部で育った自身の経験から、環境への負荷を抑えたレクリエーションに関心があり、中小スキー場の維持が移動負荷の軽減や地域の環境保全にどう寄与し得るのかを考察していきます。

  • LNTリサーチチームコメント

    本研究では、温暖化の影響により減少傾向にある小規模スキー場と、それに伴う地域社会の衰退といった現実的な課題に正面から向き合い、スキー文化の発祥地であるヨーロッパにそのヒントを探る取り組みが評価されました。小規模スキー場の維持は、スキーヤーの分散利用や周辺施設の選択を促す要因となり、過剰利用の回避や移動による化石燃料の使用削減といった、LNT行動の推進にもつながると期待されています。


野生哺乳類による遊歩道の利用と動物被食散布に与える影響の解明

井上輝紀さん(京都大学理学研究科生物科学専攻博士後期課程2)

私の研究目的は、人間が設置した遊歩道が、森林に生息する野生哺乳類と、それら野生哺乳類によって種子が散布される植物に与える影響を明らかにすることです。従来の研究で実施してきた糞や種子数のカウントだけでなく、センサーカメラや、糞から得られるDNA情報を活用して、遊歩道が影響を与える哺乳類個体の特徴の解明を試みます。森林で共生する動物と植物、そしてヒトの、三者共存の実現につながる研究を目指します!

  • LNTリサーチチームコメント
    本研究では、自然公園内の遊歩道がハイカーにどのように利用されているか、またその利用が野生動物による種子散布に与える影響を明らかにしようとする点が評価されました。特に、動物の行動特性と種子散布との関係に注目し、遊歩道の整備と動物の生態とのつながりを科学的に捉えようとするアプローチには、これまでにない着眼点と意義が見出されると考えます。人工的に設けられた遊歩道が動物による種子散布の立地にどのような影響を及ぼしているかについては、これまで十分に取り上げられてこなかったテーマであり、得られるデータは自然公園の管理や生態系保全の実践に資するものとして期待できるほか、糞や発芽種子の位置に加え、光環境(開空度など)に関するデータを併せて取得する計画は、分析の信頼性を高める観点からも有用と考えられます。


〈Leave No Trace Japan〉

LNTとは米国で発祥したアウトドアでの行動基準で、世界94ヵ国に広まっています。環境に与えるインパクトを最小限にして、アウトドアを楽しむためのテク ニックが、7つの原則を基にしており、誰にでもわかりやすく、楽しく実践することができます。

Leave No Trace Japanは設立から3年を迎え、会員数は約1,000人目前、また、大修館の体育の教科書への掲載がスタートするなど急速に認知が拡大しているほか、自治体連携や地域の環境課題を解決するスポットライトプログラム等様々な取り組みを実施しています。2024年には、世界で4か国目、アジアでは初となる公式ブランチとして認定されました。
HP:https://lntj.jp/

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